【Apple】AirPower開発中止の発表に思う、今後の可能性について
3月30日、TechCrunchの記事によると、Appleのハードウェアエンジニアリング担当上級副社長ダン・リッキオ氏は、米TechCrunchへの電子メールにて以下の声明を発表しています。
「努力の末、AirPowerは我々の高い要求水準を満たすことはできないと結論を下し、プロジェクトを中止しました。本製品の発売を楽しみにしているお客様にはお詫び申し上げます」
2017年9月にiPhone Xと共に発表された「AirPower」は、Appleが開発を進めていたワイヤレス充電器で、iPhone・Apple Watch・AirPodsの3台をまとめて充電できる、と紹介されていました。
Appleファンの間では、様々な憶測が飛び交う中、発表から約1年半経過し、ついに正式に開発中止の発表となったわけです。
中止となった主な理由
Appleは中止となった理由を公表してはいませんが、ガジェットの分解レポートで知られるiFixitが独自の仮説を紹介しています。
ワイヤレス充電器は電磁誘導の原理を利用し、送電用のコイルで電流から磁束を発生させ、受電用コイルでそれを電流に戻す、という仕組みになっています。
原理上、ノイズや発熱が問題となりやすい方式ですが、AppleはAirPowerを「最大3台のデバイスをどこに置いても充電できる」という仕様にし、難易度が高くなった可能性があるとのこと。
実際Appleが取得した特許によると、AirPowerと思われるデバイスにかなりの数のコイルを詰め込んだ図が出てきます。
iFixitは、この複数のコイル同士による干渉の問題がラボ(開発室)では解決できたものの、発売に必要なFCC(米国連邦通信委員会)の認証が通らず、発売を断念したのではないか、と予想しているとのこと。
位置合わせの方式について
ワイヤレス充電(Qi充電)の位置合わせ方式には大きく分けて下記の2つあります。
コイルアレイ方式
コイルアレイ方式とは、充電器の中に複数のコイルをまんべんなく配置することで、パッド上のどこにバッテリーが置かれても、その置かれた位置にもっとも近い、最大3個のコイルを使用して充電をおこなう方式です。
今回、AppleがAirPowerで採用しようとしていたのは、こちらの方式に近いと思われます。
2015年にmaxellが発売した充電パッド「エアボルテージ」では、ある程度位置や台数(2台)は決まっているものの、2箇所にコイルが合計7つ、それぞれ少し位置をずらしながら配列されています。これによって厳密な位置合わせが不要となっています。
ムービングコイル方式
ムービングコイル方式とは、パッド上のどこにバッテリーを置いてもチャージパッドがその位置を検出し、コイルが移動することで、バッテリーと充電器との位置関係が最適になるように、自動で調整される方式です。
2011年にパナソニックが発売したCharge Pad(QE-TM101)にはこのムービングコイル方式が採用されており、置く位置を選ばない自由度の高い製品になっていました。
当時は、Qi充電に対応したスマホはあまりなく、同じくパナソニックが販売していたモバイルバッテリーのQi充電対応商品の充電に使用するものという位置づけだったと思います。
※現在は生産終了となっています。
どちらがいいのか?
今回、Appleはどこに置いても充電できる、かつ最大3つのデバイスを同時充電できるという充電パッドを実現しようと、とにかくたくさんコイルを詰め込むという方式をとったわけですが、発熱や干渉の問題もあったため、結局実現はされませんでした。
ではムービングコイル方式ならできたんじゃないのか?なぜ採用しなかったのかという疑問が生まれます。
実はパナソニックも、初代Charge Pad(QE-TM101)のあとに後継機としてQE-TM102を発売しています。
こちらはサイズが初代に比べ、かなりコンパクトになっていますが、ムービングコイル方式ではなくなっています。
初代Charge Padは、デバイスを置いた場所を検知してコイルが自動で動いていく時に、割と大きな音がしていました。また、充電が満たんになると、別のデバイスを探して動く時の音が気になるという問題があったようです。
また、動き回るためにある程度スペースが必要になるため、充電マット自体が大きめのサイズになってしまうという問題があったのかもしれません。
最後に
Appleファンにはかなりの衝撃を受けた今回の発表ですが、かつてパナソニックがムービングコイル方式を採用した充電マットを発売したのが2011年の話です。
当時は様々な問題があったため後継機には採用はされませんでしたが、そこから約8年経っています。個人的にはAppleほどの技術力を持った企業が、サイズや音などの問題を解決できなかったのでしょうか?それとも特許的なものなのかは不明です。
一旦は開発中止となってい待ったAirPowerですが、Appleには、また数年後には開発を再開して、ぜひとも完成した製品を発表してほしいと願っています。